夢にまで見た初めての一人暮らし。私は期待に胸を膨らませて、都内の築浅アパートに引っ越しました。荷解きも一段落し、汗を流そうとシャワーを浴びようとしたその時、蛇口をいくらひねっても水が一滴も出てこないことに気づきました。時計は既に夜の八時を回り、管理会社の営業時間も過ぎています。私はパニックになり、ガスや電気の契約ミスではないかとスマートフォンで確認しましたが、どれも問題ありませんでした。数分間立ち尽くした後、ふと「元栓が閉まっているのではないか」という考えに至りました。しかし、人生で一度も水道の元栓など触ったことがなかった私は、どこを探せば良いのか全く分からなかったのです。真っ暗な廊下に出て、玄関の横にある鉄の扉を恐る恐る開けてみると、そこには複雑な配管とメーターが並んでいました。自分の部屋番号が書かれたプレートを見つけ、その横にある青いハンドルを回そうとしましたが、ガチガチに固まっていて指先が痛くなるばかりです。結局、その夜は水が使えないまま、コンビニで買ったミネラルウォーターで顔を洗うという惨めな夜を過ごしました。翌朝、管理会社の方に来てもらうと、原因はやはり入居前の清掃が終わった後に締め切られた元栓にありました。担当者の方は手際よく専用の工具でハンドルを回し、あっという間に水が出るようにしてくれました。その時に言われた「引っ越し当日の元栓チェックは基本ですよ」という言葉が、今でも耳に残っています。私はそれまで、水道はガスのように開栓立ち会いが必要なものだと思い込んでいましたが、アパートの場合は自分、あるいは管理会社があらかじめ開けておくのが一般的だとその時初めて知りました。この失敗から得た教訓は、どんなに忙しくてもライフラインの元栓だけは自分の目で確認し、操作できる状態にあるかを確認しておくべきだということです。特にアパートのような集合住宅では、隣の部屋の元栓と間違えやすい配置になっていることもあるため、確実な確認が欠かせません。今では新しい知人が引っ越しをする際には、必ず「元栓の場所は聞いた?」と声をかけるようにしています。私の苦い経験が、これから新しい生活を始める誰かの役に立つことを願って止みません。水は出て当たり前のものではなく、元栓という一つのバルブによって支えられているのだと痛感した出来事でした。