「トイレが詰まった!」という悲鳴のような依頼を受けて現場に急行すると、たいていのお客様は青い顔をして私を出迎えてくれます。そこで私がまず確認するのは「何を流しましたか?」という一点です。もし答えが「トイレットペーパーだけ」であれば、私は内心で「ああ、それなら大丈夫ですよ」と胸をなでおろします。なぜなら、トイレットペーパーはこの世で最も素直な詰まりの原因だからです。彼らは水と仲良くなれば、自らバラバラになって道を開けてくれます。私が現場でよく使う「裏技」を一つお教えしましょう。それは、単にお湯を入れるだけでなく、便器の穴の奥に向けて、細いチューブなどで空気を送り込み、お湯を循環させることです。水流が停滞している場所では、どんなに良い薬品やお湯を使っても、紙の塊の表面をなぞるだけで終わってしまいます。軽くかき混ぜる、あるいは振動を与えることで、お湯が中まで染み込みやすくなり、溶けるスピードが何倍にもなります。ただし、これはプロの道具があるからできることでもあります。家庭でやるなら、やはり一番の薬は「待ち時間」です。お客様の中には、私の目の前で「早く何とかしてくれ」と急かされる方もいますが、私はあえて「一時間お茶でも飲んで待ちましょう」と提案することがあります。無理に作業をして配管を傷つけるよりも、お湯と紙が対話する時間を作ってあげるほうが、よほどスマートな解決になるからです。また、最近の節水型トイレを使っている方は特に注意が必要です。水量が少ないため、トイレットペーパーが配管の途中で止まってしまう「停滞詰まり」が起きやすいのです。もし、流れが悪いなと感じたら、詰まってしまう前に「お湯を一杯流して、紙を溶かしきる」というメンテナンスを習慣にしてみてください。詰まってから慌てるよりも、詰まる前に溶かすほうが、精神的にも経済的にもずっと楽です。私たちは道具を使って直すのが仕事ですが、本当の達人は「道具を使わずに、物の性質を利用して直す」ことを良しとします。トイレットペーパーを敵だと思わず、水に戻してやるという優しい気持ちで向き合えば、きっとトイレも応えてくれるはずです。水回りのトラブルは、日頃の扱い方への「警告」でもあります。この機会に、トイレットペーパーとの付き合い方を少しだけ変えてみてはいかがでしょうか。その知識一つで、あなたの生活の安心感はぐっと高まるはずです。