古くなったキッチンの蛇口や、デザインが気に入らない洗面台の蛇口。これを自分の手で交換できれば、業者に依頼する工賃を節約でき、DIYの達成感も味わえるはずです。インターネットで手順を調べ、ホームセンターで新しい蛇口と工具を前にすれば、「これなら自分でもできるかも」と挑戦意欲が湧いてくるかもしれません。しかし、その一見簡単そうに見える作業には、失敗した時に家全体を巻き込む大惨事につながりかねない、重大なリスクが潜んでいることを忘れてはいけません。 蛇口交換DIYにおける最大の関門であり、最も重要な手順が、作業を始める前の「止水栓の操作」です。水道の元栓か、シンク下にある止水栓を、固く、確実に閉めること。この操作を怠ったり、閉め方が不十分だったりすると、古い蛇口を取り外した瞬間に、水道管から凄まじい勢いで水が噴き出し、キッチンや洗面所が瞬く間に水浸しになってしまいます。床材の張り替えや、階下の部屋への水漏れといった、蛇口本体の価格とは比較にならないほどの損害賠償につながる可能性もあるのです。 無事に止水栓を閉め、古い蛇口を取り外せたとしても、まだ安心はできません。新しい蛇口を取り付ける際のナットの締め付け具合は、非常に繊細な力加減が求められます。締め付けが甘ければ、接続部分からじわじわと水が漏れ出し、気づいた時には床下が水浸しに。逆に、力を入れすぎて締め付けすぎると、パッキンがずれたり、新しい蛇口の部品や給水管そのものを破損させてしまったりする危険性があります。 挑戦する前に、まずは冷静に自分のスキルと、失敗した時のリスクを天秤にかけてみてください。もし、少しでも不安を感じるのであれば、無理せずプロの水道業者に依頼するのが最も賢明な選択です。業者に支払う数千円から一万円程度の工賃は、失敗して数十万円の損害を出すリスクを回避するための、非常に安価な「保険料」と考えることができるでしょう。DIYの魅力は大きいですが、水回りの作業だけは、専門家の知識と経験に頼る価値が十分にあるのです。