洗濯機のリスクといえば、誰もがまず「水漏れ」を想像するでしょう。しかし、現代の洗濯機、特に便利な乾燥機能付きのモデルには、もう一つの重大なリスク、すなわち「火災」の危険性が潜んでいることを忘れてはなりません。便利な暮らしを支える家電が、一瞬にして火元となりうるのです。この見過ごされがちなリスクに対しても、火災保険は私たちの最後の防衛線として機能します。 なぜ乾燥機能が火災を引き起こすのでしょうか。最大の原因は、洗濯物から出る糸くずやホコリです。乾燥運転のたびに、これらはフィルターに集められますが、掃除を怠るとダクト内部に少しずつ蓄積していきます。この溜まったホコリが、乾燥機能のヒーターから発せられる高熱によって発火し、火災に至るのです。また、美容オイルやアロマオイル、ガソリンスタンドで付着した油などが染み込んだ衣類を乾燥させることも極めて危険です。これらの油分は洗濯しても完全には落ちきらず、乾燥時の熱で酸化して自然発火する可能性があります。 万が一、洗濯機が原因で火災が発生してしまった場合、火災保険がその経済的損害を補償します。燃えてしまった自宅の建物や家財はもちろん、消火活動による水濡れ損害なども補償の対象となります。もし近隣に燃え広がってしまった場合、重大な過失がなければ失火責任法により賠償責任は免れますが、ご近所との関係を考えれば心苦しい状況は避けられません。そうした事態に備え、お見舞い費用などを補償する特約もあります。 保険はあくまで最後の手段です。最も重要なのは、火災を未然に防ぐための日々の習慣に他なりません。乾燥機能を使うたびにフィルターのホコリを掃除する。油分が付着したものは乾燥機にかけない。そして、可能であれば就寝中や外出中など、目が届かない状況での乾燥運転は避ける。こうした基本的な注意を払うことが、何よりもの防火対策となります。 洗濯機は「水」だけでなく「火」のリスクも併せ持つ家電です。その利便性を安全に享受するためにも、日々のメンテナンスを徹底し、万が一に備えて適切な火災保険に加入しておくこと。この二重の備えこそが、現代の暮らしに不可欠な知恵と言えるでしょう。