普段は全く気にならないのに、なぜか雨の日、特に台風や集中豪雨の後に、洗濯機の排水口から下水のような嫌な臭いが上がってくる。このような経験はありませんか? それは、あなたの家の排水設備のせいではなく、天気、特に「気圧」と「下水道の水量」という、二つの大きな外部要因が関係している、非常に合理的な現象なのです。まず、雨の日、特に台風が接近している時には、地上付近の「気圧」が大きく低下します。通常、下水道管の内部は、地上よりもわずかに気圧が高く、その圧力差によって、下水の臭いは地上のマンホールなどから排出されるようにバランスが保たれています。しかし、台風などで地上の気圧が急激に下がると、相対的に下水道管内部の圧力が高くなります。すると、行き場を失った下水道管内の空気が、各家庭の排水管を逆流し、洗濯機の排水トラップに溜まっている「封水(水の蓋)」を押し破って、室内へと侵入してきてしまうのです。これは、蓋のゆるんだ瓶から中身の匂いが漏れやすくなるのと同じ原理です。これが、雨の日に臭いを感じる一つ目の大きな理由です。もう一つの理由は、短時間に大量の雨が降ることによる「下水道の水量の増加」です。都市部の下水道は、雨水と各家庭からの生活排水を、同じ管で処理している「合流式」が多いのが特徴です。そのため、集中豪雨などで、下水道の処理能力を超える大量の雨水が流れ込むと、下水管内の水位が急激に上昇します。すると、下水管内の空気が、上昇してきた水によって圧縮され、その圧力が各家庭の排水管を逆流してきます。その結果、ボコボコという異音と共に、洗濯機の排水口の封水を突き破って、下水の臭いが上がってくることがあるのです。これは特に、地盤の低い地域の住宅や、古い排水設備を持つ建物で起こりやすい現象です。これらの天候に起因する臭いは、多くの場合、天候が回復し、気圧と下水道システムが正常な状態に戻れば、自然に解消されます。もし、雨が上がっても臭いが続くようであれば、別の原因が考えられるため、専門家への相談を検討すべきですが、雨の日の悪臭は、自然の力が私たちの生活インフラに直接影響を及ぼす、一つの証拠と言えるでしょう。
なぜ雨の日に臭う?洗濯機排水口と天気、意外な関係