賃貸アパートやマンションで、備え付けの洗濯機や自分で設置した洗濯機が水漏れを起こしてしまった場合、「部屋の設備だから、修理や賠償は大家さんや管理会社が対応してくれるはず」と考えてしまうかもしれません。しかし、その思い込みは非常に危険です。多くの場合、その水漏れ事故の責任は入居者自身に問われ、その後の対応も自分の火災保険に頼ることになります。 賃貸物件の入居者には、民法上の「善管注意義務」というものが課せられています。これは「善良な管理者として、借りているものを注意して管理する義務」のことで、日常的な設備のメンテナンスもこれに含まれます。例えば、排水口の掃除を怠ったことで排水が詰まって水が溢れたり、給水ホースの接続部の緩みを放置した結果ホースが外れてしまったりした場合、それは入居者が注意義務を怠った「過失」と見なされる可能性が極めて高いのです。 この「入居者の過失」が原因で階下の部屋にまで被害が及んだ場合、その損害賠償責任は大家さんではなく、原因を作った入居者自身が負うことになります。そして、この高額になりがちな賠償に対応するのが、入居者が加入する火災保険の「個人賠償責任保険」特約です。大家さんが加入している建物の火災保険は、あくまで大家さんの財産を守るためのものであり、入居者の賠償責任までカバーしてくれるわけではありません。 また、水漏れによって自分の部屋の家財、例えばテレビやパソコン、お気に入りのカーペットなどが濡れてしまった場合も同様です。これらの損害は、入居者自身が加入している「家財保険」でしか補償されません。床や壁紙といった建物部分の修理は大家さんの保険で対応されることが多いですが、自分の持ち物を守れるのは自分の保険だけなのです。 だからこそ、賃貸住宅にお住まいの方にとって、適切な内容の火災保険への加入は、持ち家の場合以上に重要と言えます。入居時に不動産会社に勧められるがままに契約するのではなく、「個人賠償責任保険」と「家財保険」がきちんと付帯しているか、その補償内容は十分かをご自身の目で確認する習慣が、予期せぬ事故から生活と資産を守るための不可欠な備えとなるのです。
賃貸の洗濯機水漏れその責任は誰にあるのか