自宅が水漏れの被害に遭った時、多くの人がまず心配するのは、濡れてしまった床や壁紙といった「建物」の損害でしょう。しかし、被害はそれだけにとどまりません。水浸しになった床の上に置いてあった、大切な家具や高価な家電製品はどうなるのでしょうか。実は、火災保険の「水濡れ補償」は、建物の損害だけでなく、こうした「家財」の損害もカバーしてくれる心強い味方です。ただし、補償の対象となる家財の範囲と、その損害額の評価方法には、いくつかの重要なポイントがあります。まず、大前提として、火災保険の契約時に「家財」を保険の対象に含めていることが必要です。保険の対象を「建物のみ」としている場合は、残念ながら家財の損害は一切補償されません。ご自身の保険証券で、保険の対象が「建物と家財」あるいは「家財のみ」となっているかを、まずは確認しましょう。考え方です。多くの保険契約では、損害を受けたものと同じ品質のものを新たに購入し直すのに必要な金額、すなわち「再調達価額」を基準に保険金が支払われます。例えば、五年前に十五万円で購入したテレビが壊れた場合でも、現在同等の新品を購入するのに十五万円かかるのであれば、その金額が補償されるのです。一方で、古い契約などでは、経年による価値の減少分を差し引いた「時価」で評価されることもあります。ただし、現金や有価証券、そして自動車などは、家財保険の対象外となるのが一般的です。また、美術品や骨董品など、一点あたりの価額が高額なものについては、契約時に「明記物件」として申告しておかないと、補償額に上限が設けられる場合があるので注意が必要です。水漏れの被害は、建物だけでなく、私たちの生活を彩る大切な家財にも及びます。いざという時に備え、家財が保険の対象になっているか、そしてその補償内容はどうなっているかを確認しておくこと。それが、暮らしの安心を守るための大切な一歩となるのです。