昨日まで何も問題なかったはずなのに、今日、洗濯機を回そうとした瞬間、排水口からモワッと立ち上る、まるで下水のような不快な臭い。この「急に臭くなった」という現象は、多くの家庭で突然訪れる憂鬱なトラブルです。その原因は、決して一つではありませんが、主に三つの「突然の訪問者」が考えられます。最も一般的で、かつ最も疑わしいのが、「排水トラップの封水切れ」です。洗濯機の排水口の奥には、下水道からの悪臭や害虫の侵入を防ぐため、S字やP字に曲がった配管(排水トラップ)があり、そこには常に「封水」と呼ばれる水が溜まっています。この「水の蓋」が、何らかの理由でなくなってしまうと、下水と室内が直結し、強烈な臭いが上がってきてしまうのです。例えば、数日間洗濯機を使わなかったことによる水の蒸発や、他の場所で大量の水を流した際の吸引作用(誘導サイホン現象)で、封水は突然なくなることがあります。二つ目の原因は、「蓄積した汚れの露出」です。排水ホースや排水管の内部には、長年の使用によって、洗濯物から出る糸くず(リント)、皮脂汚れ、そして溶け残った洗剤や柔軟剤が混ざり合い、ヘドロ状の汚れとなって層を成しています。普段はその表面が水で覆われていますが、洗濯槽のクリーニングや、大量の洗濯物を洗った際の強い水流によって、このヘドロの一部が剥がれ落ち、今まで空気に触れていなかった、より臭いの強い内部が露出してしまうことがあります。これが、急な悪臭の原因となるのです。最後の原因は、「外部環境の変化」です。台風や集中豪雨によって、地域全体の下水道の水位が上昇し、管内の空気が各家庭の排水口へ押し出されることで、一時的に臭いが逆流してくることがあります。また、マンションなどの集合住宅では、他の部屋の排水トラブルが影響している可能性もゼロではありません。まずは慌てず、排水トラップに水を注ぎ足すことから始めてみましょう。