突然の水漏れでパニックになっている時、駆けつけた修理業者から「大丈夫ですよ、これは火災保険が使えるので自己負担はありません」と言われたら、多くの人は心から安堵し、その言葉を信じてしまうでしょう。しかし、その甘い言葉を鵜呑みにし、言われるがままに契約書にサインをしてしまうと、後で大きなトラブルに巻き込まれる危険性があります。業者と保険会社は全く別の組織であり、保険金が支払われるかどうかを最終的に判断するのは、あくまで保険会社なのです。 一部の悪質な修理業者は、この「保険金が使える」というセールストークを、高額な契約を結ばせるための常套句として利用します。依頼者が保険を使えるならと安心して契約したものの、後日、保険会社から「その修理は補償の対象外です」と判断され、高額な修理費用を全額自己負担しなければならなくなる、というケースが後を絶ちません。また、業者によっては、保険金が下りるように、本来は不要な工事まで含めて過剰な見積もりを作成したり、あるいは経年劣化が原因であるにもかかわらず、自然災害による被害だと偽って保険申請を勧めたりすることさえあります。もし、こうした不正な請求に加担してしまうと、依頼者自身が保険金詐欺の共犯者と見なされるリスクさえあるのです。 では、どうすればこのようなトラブルから身を守れるのでしょうか。まず、大前提として「保険金が支払われるかどうかを判断するのは、修理業者ではなく保険会社である」という事実を肝に銘じておくことです。業者の言葉は、あくまで一つの可能性として捉え、決して確定情報だと思わないようにしましょう。 そして、修理契約を結ぶ前に、必ず自分自身で保険会社に連絡を取り、今回の水漏れが補償の対象になるのか、そしてどのような手続きが必要なのかを直接確認することが不可欠です。保険会社から「対象になる可能性が高い」との見解を得た上で、初めて修理業者と契約を進める、という手順を踏むのが最も安全です。 業者の「保険が使えます」は、あくまで営業トークの一つかもしれない。その言葉の裏にあるリスクを理解し、必ず保険会社への直接確認を怠らないこと。その冷静な姿勢こそが、あなたを悪質な業者と予期せぬ出費から守る、何よりの防御策となるのです。