引越しは、新生活への期待に胸を膨らませる一大イベントです。しかし、荷造りや各種手続きに追われる中で、つい後回しにされがちなのが洗濯機の設置と火災保険の見直しです。この二つは密接に関連しており、手続きを怠ると、新居での生活が始まった途端に予期せぬトラブルと経済的な負担に見舞われる可能性があります。 引越し時の水漏れ事故で最も多いのが、洗濯機の設置ミスです。費用を節約しようと自分で設置したり、引越し業者の基本サービスで済ませたりした場合、給水ホースや排水ホースの接続が不完全なことがあります。その結果、入居後初めて洗濯機を回した際に水漏れが発生し、新品の床や壁を濡らし、最悪の場合は階下の部屋にまで被害を及ぼすというケースは後を絶ちません。この場合、原因が設置ミスであれば、その責任は設置を行った者、つまり自分自身や引越し業者に問われることになります。 こうした事態に備えるのが火災保険ですが、ここにも引越しならではの落とし穴があります。旧居で加入していた火災保険は、あくまで旧居の住所と建物に対して有効なものです。引越し先の新しい住所に変更する手続きを忘れていると、万が一事故が起きても補償の対象外となってしまいます。また、たとえ住所変更をしても、新居の建物の構造や広さが変われば、必要な補償額も変わってきます。旧居の契約内容のままでは、補償が不十分になる可能性も十分に考えられるのです。 新生活を安心してスタートさせるためには、引越しが決まった段階で、すぐに保険会社へ連絡し、火災保険の住所変更手続きと補償内容の見直しを行うことが不可欠です。特に、階下への賠償に備える「個人賠償責任保険」や、自分の家財を守る「家財保険」は、賃貸・持ち家に関わらず必須の備えと言えるでしょう。そして、洗濯機の設置はできる限り専門業者に依頼し、設置後には必ず試運転を行って、水漏れがないか自分の目で確認する。この一手間が、引越し直後の大きなトラブルを防ぐ最も確実な方法なのです。